2010年、当時25歳のグラント・サバティエは朝起きると、
自分の銀行口座に2.26ドルしかないことに気づいた。
それから5年、彼の純資産は125万ドルを超え、
30歳ですでに経済的自立に到達していた。
それまでの過程を通して彼が気づいたのは、
お金や仕事、リタイアに関する従来の考え方のほとんどが間違っている、
不完全、もしくは時代遅れだったということだ。
ずばりのタイトルのこちら、FIRE(経済的自立・早期リタイア)への道筋を具体的に指南する内容となっています。
専門的で難解なことは書かれておらず、生活者・労働者としての実体験が根底にあるところが好印象でした。
いかに支出を減らすか(減らせるのはコーヒー代か?ランチ代か?それとも家賃か?)、いかに自由になる時間を増やすか(リモートワークの権利を勝ち取るには)など、著者や彼のコミュニティに属する人たちの努力は参考になります。
500ページとボリュームはありますが、翻訳調ではないやさしい文体ですし、一読の価値はあると思います。
ただ星三つとしたのは、あくまでアメリカでのやり方だなと感じる部分があったのと、投資手法についてはあまり語られていないためです。
(でももし本書でFIREの概念に初めて触れるとしたら、星四つの価値はあるかもしれません!)
アメリカでは雇用が不安定であったり不動産の価値は上がるのが基本ということであったり、前提となる条件が異なります。
家賃を節約するために旅行中の人の家に住ませてもらうといった異文化は興味深く読みましたが、文化や税制度などが違うので日本で実践できないものも含まれていました。
投資手法については、VTIやS&P500といった株式ETFと、BNDのような債権ETF(そして不動産現物投資)で十分だというのが著者の主張です。
その理由や実績も示されていますが、銘柄選定や売買を楽しみたい人には少し物足りないかもしれません。
これから資産運用を始めようとしている方には、たとえ今はFIREを目指していないとしても、どういう人生を歩みたいかを改めて考えさせてくれる良書だと思いました。
また納得いく仕事に就けていない方、そもそも労働に向いていないと感じる方にとっても、本書は人生をコントロールするための手段を教えてくれます。
興味のある章だけでも、ぜひ読んでみてください。